「キリンお前もか！」グランドキリンIPA　キリンが造ったインディアペールエール

近くの酒屋に行ったら、またまた目にとまるビールがありました。これも例に漏れず「IPA」との表示があります。

IPAとはインディア（India）ペール（Pale）エール（Ale）の略で、ポップを多く使用した香りと苦みの強いビールです。

詳細は、同じくIPA「インドの青鬼」を参照してください。

最近このIPAが世界中で人気を博して、多くのクラフトビールメーカーから、数多くのIPAが商品ラインナップに載っています。日本においても、ヤッホーブルーイングの「インドの青鬼」、エチゴビールの「FFLYING　IPA」、J-CRAFTの「ジュージーIPA」と「ガツんとIPA」等々です。

でも、今回見つけたのは、「グランドキリンIPA」です。

そう、クラフトビールメーカーでなく、あのビール業界の巨人、キリンが造ったIPAなんですよ。

「ブルータスお前もか！」でなく「キリンお前もか！」って心の中で叫びましたよ、ほんとにまじで。

ちなみに、「ブルータスお前もか！」というセリフは、ローマ帝国の英雄ユリウス・カエサル（シーザー）が、最も信頼している腹心のブルータスに、裏切られたときのセリフです。そう、カエサルにすると、まさか、まさかの裏切りです。

同様にポチにとっては、キリンがIPAを造るのが、まさかまさかの展開でした。IPAが人気と言っても、生産量ではピルスナー（日本の普通のビールスタイル）には遠く及びません。まさか、キリンお前もIPAを造るのか！って感じでした。

そもそも、日本のビール業界は、非常に歪な構造をしていました。ビール製造免許を手にすることができるのは、キリン、アサヒ、サッポロなど一部の大手ビールメーカーのみで、新規参入はほぼ不可能な状態でした。さらにその大手メーカーが、数多くあるビールの種類の中から、「ピルスナー」と呼ばれる、スタイルのビールのみ生産し、販売していたのです。スーパードライも一番搾りも黒ラベルもピルスナーです。

（ピルスナーについてはエビスプレミアムエールをご参考ください）

ですので、日本人は黄金色で切れのあるのど越しが特徴の、ピルスナーと呼ばれるスタイルのビールしか飲んできませんでしたし、それ以外のビールスタイルを知りませんでした。実際多くの日本人は今でも、このピルスナーこそがビールだと、勘違いしています。一部の大手ビールメーカーが、日本人の飲むビールの種類や味を決め、消費者には選択の自由がない、「ピルスナー絶対王政」の時代です。

しかし、この状況が変わったのが1994年の酒税法の改正です。

ビール製造免許を獲得するために必要な年間最低生産量が60万キロリットルに引き下げられ、生産量の少ないビールメーカー（クラフトビールメーカー）が日本でも成立するようになったのです。この後、クラフトビールメーカー第一号のエチゴビールを筆頭に、日本に多数のクラフトビールが生まれるきっかけになったのです。まさに「日本ビール民主化革命」です。（Flying IPA参照）

以来、日本全国に、数多くのクラフトビールメーカー（ブリュワリーと言う）が生まれ続け、2021年についにその数は500を超えるとのことです。想像以上に多くてびっくりですね！

このようないきさつがあり、ピルスナー絶対王政を敷いていた、大手ビールメーカー、特にアサヒと苛烈なシェア1位争いを繰り広げていたキリンは、ピルスナーの申し子のような存在なのです。キリンはピルスナーによって今日の地位を得ているのです。

そんなキリンが、なんとなんと、まさかのIPAを造るんですよ。

もう一度言います

キリンがIPA（インディアペールエール）を造ったんですよ。

事件じゃないですか？

これはもう、飲まない手はないですよね。

色は少し濃いめのアンバー

香りを一嗅ぎするだけで、ピルスナーとは決定的に異なる、フルーティーなエールっぽい香りがします。ホップによるものと思われる、さわやかな草木の香りもありますね。

口にすると、液体は非常に滑らかで舌にまとわりつく感じがしました。味わいは、フルーティーなエールらしい味わいで、苦みもしっかりあります。ただ、IPAとしては苦みがかなり抑えられているように感じました。ですので、飲みやすく、バランスが取れています。逆に言うと、ちょっと普通ぽいですね。IPAですので、がっつん系を期待したら、肩透かしかな？　ポチ的にはもう少し攻めてもよかったんじゃないかなぁと思うのですが、そこはキリンです。そつなくまとめて、万人受けする、非常飲みやすいIPAに仕上げています。

とはいえIPAですので、普通のビールと比べると、苦みがしっかりしているなと感じるはずです。これが、クラフトビールのIPAより安く230円程度で提供されているところは、さすがキリンビールですね。